2024.06.12
オンラインショップ・送料変更のお知らせ
いつもDI SERをご利用いただき、誠にありがとうございます。
この度、2024年7月1日(月)ご注文分より配送料を改定させていただくことになりました。原材料や資材、物流費などの諸経費の値上がりを受け、やむなく送料を改定させていただきます。
お客様には大変心苦しいお願いとなりますが、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
【改定実施日】
2024年7月1日(月)ご注文分より
【改定後送料】
北海道・東北・関東地方:1,100円(税込)
関西・中部北陸・中国四国・九州地方:1,650円(税込)
沖縄地方:2,200円(税込)
※ご購入金額が22,000円(税込)以上で送料無料(お届け先複数の場合は1配送毎)
2024.05.07
「神座」発売のご案内
いつもDI SER香水をご愛用くださいまして、誠にありがとうございます。
令和6年5月14日(火)、新作香水、”神座”を発売いたします。この香りはスウェーデン、Gents ABの創立20周年を記念し創られた香水です。Gentsさんは、スウェーデンの南、マルメー地域で床屋と香水専門店を経営する会社です。構想から1年以上を費やした神座は、トップからラストが予想できない香りに仕上げております。是非、この機会にお試しください。
ディセル 篠原康幸
2023.03.13
「十六夜」発売のご案内
いつもDI SERをご利用いただき、誠にありがとうございます。
ディセルでは、新作香水「十六夜」を発売いたしました。
この香水は、日本古来から親しまれている「山椒」や「柚子」、「薔薇」、「香木」を使用し“日本の美”を表現しております。透明感の中に、奥行きのある香りに仕上げておりますので、プライベートからフォーマルまで幅広いシーンでお使いいただけます。「和」の香りが日々の生活を豊かにする手助けになれば幸いです。
ディセル 篠原康幸
2022.12.10
「華の音」発売のご案内
いつもDI SERをご利用いただき、誠にありがとうございます。
ディセルでは、新作香水「華の音」を発売いたしました。
これは、「バラの花」や「香木」、「音」をテーマにした香水です。北海道のバラであるハマナスを始めとした、数種類のバラと香木を使用した香水となります。芳醇で、華やかな香りに仕上げております。「和」の香りが日々の生活を豊かにする手助けになれば幸いです。
ディセル 篠原康幸
2022.03.28
「光る大地」「星月夜」発売のご案内
いつもDI SERをご利用いただき、誠にありがとうございます。
ディセルでは、新しく「光る大地」「星月夜」の2種類の香水を発売いたしました。
今回は、「樹木」「大地」「光り」をテーマに、樹木をベースとした透明感のある香りに仕上げております。「和」の香りが日々の生活を豊かにする手助けになれば幸いです。
ディセル 篠原康幸
2021.08.08
「花まつり」発売のご案内
いつもDI SERをご利用いただき、誠にありがとうございます。
ディセルでは、新しくBOW・ 国際香水コンテスト2021において最優秀作品賞を受賞した「花まつり」を発売いたしました。今回は、日本で愛される桜や木蓮、スミレをテーマにした香水を創りました。お釈迦さまの誕生日を祝う4月8日、花まつりは、ピンクや白の花々が寺院を包み込む花の季節となります。
「花まつり」は、その季節に咲く花々と寺院の空間を融合させた香りとなります。「和」の香りが日々の生活を豊かにする手助けになれば幸いです。
ディセル 篠原康幸
2021.08.02
BOW・国際香水コンテスト2021ー最優秀作品賞・受賞
皆様
お世話になっております。
この度、「ディセル 花まつり」が、今年6月にスペイン・バルセロナで開催されたBOW・ 国際香水コンテスト2021において最優秀作品賞に選ばれました。
1999年頃から香水を創りはじめ、札幌の店舗のみで販売していた香水でしたが、2011年の東日本大震災を契機に、その名を DI SER「ディセル」と命名し、世界へ向けて発信を始めました。
そして、10 年目の今年、”美しき日本”を海外へ伝えたいという思いが、1つの形となったことを社員一同、大変嬉しく思っています。同時に、このような賞をいただけたのも、皆様の応援のお陰であると感謝しております。
今後、益々、”日本”というものを香りにのせて世界へ発信してまいります。今後共、宜しくお願いたします。 ありがとうございました。
令和3年8月吉日 / DI SER / 篠原康幸
BOW・国際香水コンテスト2021
Perfumer Flavorist
2020.11.12
新商品発売のご案内
いつもDI SERをご利用頂き、誠にありがとうございます。
ディセルでは、新しく「つづみぼし」「花ひらく」「香波」の3種類の香水を発売いたしました。
今回は、「香辛料」「花」「樹木」をテーマに、フレッシュで透明感のある香りに仕上げております。「和」の香りが日々の生活を豊かにする手助けになれば幸いです。
ディセル 篠原康幸
2020.09.22
新商品発売のご案内
いつもDI SERをご利用頂き、誠にありがとうございます。
ディセルでは、新しく「水」「空」「かぎろひ・パルファン」「かぎろひ・オードパルファン」の4種類の香水を発売いたしました。
今回は、古来から日本の生活の中で使われてきた、山椒や紫蘇、柚子、檜、沈香、ハマナスなどをテーマにした香水を創りました。良質な原料を集め、その香りを抽出するところから取り組みましたので、バランスよく深みのある香りに仕上がっております。「和」の香りが日々の生活を豊かにする手助けになれば幸いです。
ディセル 篠原康幸
2019.12.27
年末年始休業のお知らせ
いつもDI SERをご利用頂き、誠にありがとうございます。
12月28日~1月5日までの間、年末年始の休業とさせて頂きます。休業期間中もWEBショップ内でのご注文は通常通りご利用頂けますが、商品の発送及びお問合せの返信につきましては、1月6日(月)より順次お手続きさせていただきます。
休業期間中、お客様にはご迷惑をおかけ致しますが、何卒よろしくお願い申しあげます。
2019.05.22
スウェーデンの「GENTS AB」にてDI SER(ディセル)の香水を販売開始いたしました。
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下記ショップにて<DI SER(ディセル)>の香水を販売開始いたしました。
GENTS AB
Andesitgatan 14D
254 68 Helsingborg
Sweden
販売サイト「gents.」:www.gents.com ※海外のサイトになります。
Facebook / Instagram / LinkedIn / YouTube
2019.02.05
京都賞
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ディセルの香水が、京都賞の香りとして選ばれました。2019年11月に開催されるセレモニーで使用されます。
https://www.kyotoprize.org/
2018.07.17
「DI SER 香りの講座」を開催しました。
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スイス・チューリッヒにある「ONODA」ショップにて「DI SER 香りの講座」を開催しました。
今回の講座では、「調香の基礎」や日本の伝統文化である「香道」を紹介いたしました。
現地のライターさんが書いた講座の様子を以下のURLよりご覧頂になれます。
【swiss-architects】
https://www.swiss-architects.com/de/architecture-news/meldungen/sinnesschule
【ONODA】
https://www.onoda.ch/news/2018/7/18/workshop-with-di-ser
2018.01.11
Artistic Perfumery Esxence – The Scent of Excellence
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イタリア・ミラノで開催される香水展に参加します。
イベント名:Artistic Perfumery Esxence – The Scent of Excellence
開催場所:イタリア・ミラノ
開催期間:2018.4.5~4.8
ウェブサイト:http://esxence.com/
2017.09.27
送料改定のおしらせ
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日頃よりDI SERをご利用いただきまして、誠にありがとうございます。
当社が委託している運送会社様より値上げの要請があり、やむなく10月1日(日)ご注文分より送料の改定をさせていただくことになりました。何卒ご理解を賜りますよう、お願い申し上げます。
改定後:全国一律送料540円、ご購入金額2万円以上で送料無料
2017.08.07
PITTY FRAGRANZE 15
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2012年のElemets Showcase(ニューヨーク)から始まり、'12/Global art perfumery(デュッセルドルフ)、'16/Pitti FRAGRANZE(フィレンツェ)、'17/TRANOÏ Parfum(パリ)に引き続き、今回で海外5度目の参加となる香水展「PITTY FRAGRANZE 15」イタリア・フィレンツェで開催されます。
開催日程は、2017.9.8~10迄の3日間。招待券をご用意しております。現在イタリア在住の方はもちろん、イタリア滞在予定の方は、メールまたはお電話にてエッセンチアまでお問い合わせください。現地の開催模様は、Facebook に掲載予定です。
2016.11.01
Webサイトリニューアル
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ディセルオフィシャルサイトでは、シリーズ全商品のご紹介、オンラインショッピングをお楽しみいただけます。 Columnでは、香水・香りの基礎知識をはじめ、香りの歴史、香道などの情報を掲載しています。
香りの旅は、エッセンチア代表 篠原康幸によるイラン カーシャン・フランス グラースの旅行記。香料となる植物のことから、出逢い、文化、科学技術に至るまで現地で感じたことをそのまま記しています。是非ご覧ください。
香水・香料について
-香水・香料の種類-
香水は香料をエタノールに溶かしたものです。香水は香料の濃度によって香水からコロンまで色々な呼び方をされます。アルコールに対する香料の割合が、15 ~ 30%のものをパルファン(香水)、8 ~ 15%のものをオードパルファン、4 ~ 8%のものをオードトワレ、3 ~ 5%のものをオーデコロンと分類し、用途にあわせて使い分けます。
香料は原料や製法によって天然香料と単体香料に分けられます。天然香料は、植物の花や葉、樹脂、根から抽出される植物性香料とシカ(麝香)やクジラ(アンバー)などから抽出される動物性香料に分けられます。単体香料は天然物から必要な成分のみを抽出する単離香料と有機合成による合成香料に分類できます。
一期一会の香り
-植物の香り 精油-
精油の精とは本来「天」の意味があり、植物の本質とか生命といわれます。精油は植物成分の中でも気体であるため活性が高く、空気中では目で見ることはできません。それぞれが異なる芳香を持ち、すぐに揮発してしまうものもあれば、長い間同じ香りを放つものもあります。
植物はこの性質を利用して周りの植物と情報交換したり、外敵から身を守ったり、昆虫を呼んだりと精油を情報伝達に利用しています。精油はその年の気候条件、産地、搾取時期等さまざまな条件によって香りが変化しますので、そのとき出会えたその香りは一期一会の香りです。
心身の浄化 純粋
-香料の歴史-
植物のエッセンスである香料は、芸術、食、宗教、医学など私たちの文化に多くの恩恵を与えてきました。さまざまな歴史を持つ香料は金や物品と交換されたり、治療に用いられたりと多くの分野で発展してきました。その中でも乳香であるフランキンセンスは、昔からいたるところで取引され金と同等の価値があるとされてきました。
古代エジプトでは、乳香は神々への捧げものとして祭壇で焚かれました。今日でもカトリック教会で使用されています。1912年にツタンカーメンの墳墓が発見されたときにも、香膏を納めたガラス製の壺が見つかりました。その香膏は数千年前に作られたにもかかわらず、壺の中の乳香とスパイクナルドは今と変わらない芳香を放っていたそうです。
当時、これらの香料を作り出す人々は錬金術師と呼ばれ、その多くは僧侶や神官などの宗教者でした。この方々は自然からさまざまな香料を抽出する技術を持っていました。
香りは精神を高揚させたり、鎮静させることから宗教的な意味合いでも多く使用されていました。当時の教会や寺院は病気治療とも密接に関係していましたので、香りを心身に通し浄化することがよく行われていました。このようなことから香料、香水を意味するParfum(パルファン)やPerfumu(パヒューム)はラテン語のPer fumum「煙を通して」に由来し、心身の浄化、純粋を意味します。
-民族と体臭-
日本人は世界的にみると体臭の無い民族とされています。これはよく入浴することや和食を中心とした食べ物のせいといわれています。ヨーロッパの人たちは他の民族から「酸臭(すっぱい)」がするといわれます。そしてエスキモー人は「魚」臭いといわれます。これはそれぞれの民族の体臭と生活習慣との間には密接なかかわり合いがあることを示しています。
日本人は本来体臭のない民族でしたので、香りの強い香水の文化を発展させてきませんでした。日本古来の香り文化である香道で使用する香りは、伽羅、羅国、佐曾羅、真南蛮など繊細な香りですし、日本のハーブといわれる薬用食物も茗荷や生姜、山椒、紫蘇、柚子など繊細なものが多いです。
昔の日本女性は外出する際、前日の晩に着物の下でお香を焚き着物に付くほのかな香りを楽しみました。このように日本人は強い香りを表現するより、ほのかに薫る香りに侘び寂びを感じるようです。
香りを聞く
-香道-
日本古来の伝統文化には茶道、華道、香道、剣道、柔道、合気道など「道」が付くものがあります。この「道」という言葉は高い精神性を持って道を極めるという意味があります。この中の「香道」とは香りに関するもので、鎌倉時代(1185年~)に一定の作法や様式が確立され、現代までに香りを芸術の域まで高めてきたものです。
香道ではAgarwood の香木を使用し、これらを産地と味覚の表現により六国五味によって分類します。六国「伽羅、佐曾羅、羅国、真那蛮、真那伽、寸門多羅)、五味(甘、辛、酸、苦、鹹)この中で最高品質のものが伽羅とされます。伽羅(ベトナム・苦、辛)佐曾羅(インド・辛い)、羅国(タイ・甘)、真那蛮(インド・鹹)、真那伽(マラッカ・鹹、無)、寸門多羅(スマトラ島・酸)
香道では昔から香りを「嗅ぐ」のではなく「聞く」と表現します。これは香りを通じて「自分の心の声を聞く」、「自分を聞く」という意味合いがあります。
イラン カーシャン地方 ダマスクローズ
数千年の昔から世代を繋げてきた、ダマスクローズの原種
イランでは5月の中旬から6月の終わり頃までバラの花が咲きます。5月末に訪れたカーシャン地方のバラの谷は年に一度の収穫の真っ最中でした。この地域は、標高が2000m以上と高いため、朝晩はとても冷え込みますが、昼間は30℃近くまで気温が上がります。また、雨がほとんど降らない乾燥した気候条件の為、バラの病気がなく栽培には適した土地です。
他の地域のダマスクローズ種と比べると、少し小ぶりな花姿と繊細な香りを持ちます。この地方でのバラの栽培の歴史は古く、1000年以上前からバラ精油、バラ水の生産が行われてきました。世界中のダマスクローズの原種はこの地が発祥とされ、イランの中でもここで栽培されたバラが最良のものとされています。
イランへの飛行ルートはいくつかありますが、今回は成田から北京を経由して、イラン首都であるテヘランまで行きました。日本からの所要時間はおよそ13時間。 トランジットの北京ではゾロゾロと乗客が降りてしまい、北京からテヘランまでの機内は人がまばらで、あまりの機内の変わりように驚かされました。 テヘラン市内からこのカーシャン地域までは車でおよそ3時間です。
早朝から家族総出でバラを摘む
この地域はカーシャン地方の中でも標高が 2000m 以上と高いため、他の地域と比べるとバラの咲く時期が半月ほど遅くなります。 バラ摘みは早朝4時ころから始まり、太陽の上がる10時ころまでには終わります。これは気温が上がってくるとバラの香りが飛んでしまい、品質の良い精油が採れなくなるためです。畑では朝早くから家族の長が、それぞれに指示を出し小気味良くバラを摘んでいました。 ここでは4月から9月までは乾期のため、乾燥しきった砂漠のような場所ですが、山脈からの豊富な雪解け水を利用したバラの栽培が盛んにおこなわれています。
カーシャン ダマスクローズ
ラテン名 Rose damascena trigintipetala
この地のバラにはうどん粉病のような細菌やウイルスの病気がありません。これは空気が乾燥しているためカビなどの菌が繁殖できないのと、数千年の間バラの品種改良が一切行われなかったために、ここの環境に適応した病気に強いバラ種だけが生き残ったとされています。 無農薬での栽培が行われていますが、そもそも有機農法とか無農薬有機栽培という言葉自体がないそうです。
植物は動くことができませんので、そこの環境に適応するために独自のシステムを作り出します。このような自然環境が過酷な地域では、寒さや乾燥から身を守る為の成分を体内に作らなければなりませんので、この地のバラ成分は独自な特性を持っています。現地の方に「イランのバラが育つ環境は過酷な砂漠のような場所ですね」と尋ねると「こちらではここは砂漠とは呼びません」土漠と呼びます。砂漠はもっと過酷な環境です。とあっさり話しておりました。 イランには微生物も住めないようなもっと過酷な砂漠があると言っておりました。土漠と砂漠の違い???
標高2500mで作られる緑色のバラ精油
この地方では湧き水と昔ながらの水蒸気蒸留法でバラの精油が作られています。手摘みによって収穫されたバラの花を蒸留釡に入れ、湧き水と共に加熱することで、ローズ精油とローズ水が作られます。この会社ではおよそ4トンのバラの花から約1Kgの精油を抽出しているそうです。副産物のバラ水には0.075% のバラ精油が含まれ、そのPH はおよそ4.5です。
通常バラの精油は黄色ですが、ここで作られるバラ精油は色鮮やかな深緑色をしています。これはバラが厳しい環境で生存するために独自の成分を作り出すのと、バラの樹木を3~4年で株元から丸刈りして、樹木の活性を高めているためだそうです。ここでも樹木の活性が弱まっていくと、精油の色が緑色から黄色に変わるそうです。
抽出したてのバラ精油、鮮やかな深緑色
上層がバラ精油、下層がバラ水
黄色より緑色の方が振動数が高いため、この地のバラ精油は色からもエネルギーが高いことがわかります。(DI SER シリーズの香水には、この精油をもう一度蒸留し、成分を濃縮した精油が使われています。)
【バラ精油成分組成 % GC/MS】
citronellol - 44.25
n-nonadecan - 13.51
geraniol - 8.02
phentyl alcohol - 5.52
linalool - 1.86
イランは初めて水蒸気蒸留という手法を発明し、バラから香り成分を抽出した国です。過酷な自然環境にもかかわらず、1000年以上も前から湧き水や雪解け水を利用した蒸留を行ってきました。街のあちらこちらにカナートと呼ばれる地下水路が敷かれ、豊富な雪解け水が流れています。一般の家庭でも、このカナートを天然の冷却装置として利用したバラの蒸留が行われていました。
山脈から流れる豊富な雪解け水、カナートと呼ばれる地下水道
雪解け水を冷却水として利用した伝統的な家庭用水蒸気蒸留装置。カナート
ペルシャ文化とイラン革命
イラン人は古くから国の名前を「アーリアの国」を意味する「イラン」と呼びます。西洋ではファールス州の古名「パールス」にちなみペルシアと呼び ます。イラン=アーリアは「高貴な人々」の意味合いを持ちます。 1979年のイラン•イスラーム革命の後、国制の名をイスラームとし、国名がイランと定められました。イラン文化を表す場合にはペルシアを用います。
この革命を境に庶民の生活様式は一変し、女性は髪と体を覆うヒャジャブの着用を強制され、違反すると逮捕され罰せられます。これは外国の女性も例外ではなく、厳しい戒律のもと管理されています。 また、酒が禁止となり販売はもとより、飲むことすら法律で禁止となった為、街中にあった酒場のほとんどは食堂へと変わったようです。 今回、ガイドさんに連れて行っていただいた食堂も、以前はディスコでミニスカートをはいた女性が踊りながら、お酒を飲む酒場だったと言っていました。
世界遺産 アブヤーネ村、男性は幅広いズボンをはき、女性は白地にバラの模様の入ったスカーを被ります(服装は古来ゾロアスター教徒の名残)
カシャーン郊外にあるアッパーズ1世が造った水路が美しい庭園。
イランのチャイハーネ(チャイ=お茶、ハーネ=家)では紅茶はストレートで出される。その際にサフランで香りと色づけされた氷砂糖が付く。
イスラム文化は男性と女性の区別が厳格にされているため、来客の際に男か女が分かるようにドアのチャイムベルも音により区別されている。左は女性用、右は男性用のチャイムベルを鳴らす。
イランには親日家がとても多く、今回の旅では会う人、出会う人が親日家で、皆口を揃えて日本の科学技術は凄いと言っておりました。本当は日本と天然ガスの開発など一緒に仕事がしたいけど、アメリカとの関係があるからね~と口を濁しておりました。イラン人は日本人と感性が似ており、客人をもてなすのが大好きです。今回の旅は、イランで出会った人たちの厚い人情やペルシャ文化を感じた旅でした。
2010 秋 / 著者:篠原康幸
南仏 グラース 香りの聖地
南フランスに位置するグラースは香りの街として世界中に知られています。ここでは世界の香水の約8%、フランス国内の香水の約60%が作られているそうです。 この街の人口は約五万人で、その10%が香りに関連する仕事をしているといわれています。この土地は一年を通じて気候が温暖なためバラやジャスミン、ミモザ、ラベンダー、チュベローズなどの栽培に適しています。5月にはローズ祭、8月にはジャスミン祭が行われ、この時期には観光客で街がとてもにぎわいを見せます。
グラース旧市街では空中に張り巡らされた電線から、ジャスミンの香りが定時的に放出される。
グラースはもともと革製品の生産が盛んな地域でした。16世紀に皮の臭いを消すために手袋に香りを付けたところ、これが大ヒットし、以来、香水産業が発達しました。現在でも1784年創業のフラゴナール社や1747年創業のガリマール社、1849年創業のモリナール社などの香水会社が残っています。 フランスで活躍する調香師のほとんどがこの街の出身と言われています。
今回のフライトは成田から南ドイツのミュンヘンを経由して、ニースまで向かいました。飛行時間はおよそ15時間、前日の昼12時に成田を出発してニースに着いたのは翌日の21時頃でした。日本との時差は8時間。入国審査はトランジットのミュンヘンで済ますため、到着地のニースでは荷物を受け取りそのまま出られます。グラースはカンヌから内陸へ17km、ニースからは34kmの場所に位置します。グラースまでの交通手段はバスと電車の二種類があり、ニースからはバスで約1時間半、カンヌからは約30分の距離にあります。ニースからグラースまでのバス料金は1ユーロ約110円です。
GIP パヒューマー養成スクール
グラースで調香師のための専門学校が2002年に設立され GIP Grasse Institute Perfumeryと呼ばれます。このGIPはグラースの香料会社がスポンサーとなり次世代のパヒューマーを育成するために作られました。このパヒューマー養成コースは一年間の本コースの他に7月、8月の夏期に行われる二週間の短期講座があります。
今回はニューヨークから3人、イタリア2人 、ギリシャ1人、スペイン1人、ポルトガル1人、インドネシア1人、韓国1人、フランス1人、アルゼンチン1人、日本1人の合計14人でした。香水会社でマネージメントの仕事をしている方や調香師として働いている方など様々な方々が世界中から集まりました。
先生はローレンスさん、香料メーカーのジボダンで調香師として働いていた方です。授業は朝9時から夕方5時まで、途中ランチを中庭で先生と生徒の皆で一緒にとります。フランス式のせいかランチには必ず赤ワインとロゼがつきます。これを飲み過ぎると午後から鼻が利かなくなります。要注意です。(笑)
初日の授業では約20種類の天然香料の名前と香り、分類、抽出方法、産地、主成分、表現方法を学びました。例えばオークモスであれば抽出方法は溶媒抽出、産地はイタリア、南フランスのものが品質が良く、香りはリッチでアラウンドでソフトウォームなどと表現をしていきます。日本人にしてみると香りの表現でリッチでアラウンドと言われてもピンときませんが、フランスではこれをリッチでアラウンドの香りと表現するのかと、自分に言い聞かせながら香りの表現を覚えるように努めました。(笑)
一日ごとに香りの種類が増え、朝と午後に覚えた香りのテストが必ずあります。この香りは何ですか?ファミリーは?違いは? etc.. これらの単品の香料を覚えると、次に香水において欠かせないアコードについて勉強を進めていきます。
例えばゼラニウムとラベンダーふたつの香料を混ぜて使う際、それぞれをどのくらいの割合で調合したらバランスが良いのかがアコードです。ゼラニウムというのはローズ調のフローラルな香りですので、これにラベンダーを混ぜる場合、ラベンダーのアロマティクとかラスティクを相殺してしまわないように、どの比率で混ぜた時が バランスがよいのかを調べていきます。ゼラニウム3に対して ラベンダー7がよいのか? 6:4?5:5? なのか先生が「もう少し上」「もう少し下」と採点してくれます。採点が戻ってきたものを再度回答しなおして、それを先生が再び採点するの繰り返しです。調香のトレーニングもこのような基礎練習を正確に繰り返していくことで実力がついていきます。
チュベローズファーム
この地域ではジャスミンやチュベローズ、ローズなどの契約栽培が行われていました。今回、お伺いした農園でもシャネルのチュベローズを契約栽培しておりました。何に使うのかを責任者に聞いたところ一切秘密と口を閉ざしておりました。 チュベローズは畑の養分をほとんど吸収しまうので、毎年ごとに畑を替えなければよい香りにならないと言っておりました。ジャスミンはこの時期が収穫最盛期で畑はジャスミンの香りで満ちて いました。
ジャスミン花 モクセイ科
ラテン名 Jasminum grandifloraチュベローズ花 Polyanthes Tuberosa L.ヒガンバナ科に属し、中央アメリカ、メキシコ原産 夜になると香りを増すことから和名は「月下香」ゲッカコウ
チュニジアからの出稼ぎの人。熟練した方で2~3時間でおよそ2kgほどの花が摘めると言われています。
チュニジアからの出稼ぎ労働者の方々が朝早くからジャスミンの花を収穫していましたが、ちょうどこの時期がラマダンにあたるため、この暑い真夏にもかかわらず朝から何も口にせずにジャスミンの花を収穫していました。
グラースでのジャスミンシーズンは7月の終わりから11月のはじめまでで、通常の天候では8月10日から10月20日くらいまでが花の最盛期です。夏の花と秋の花では大きさが異なるため、1Kgの花を収穫するのに8月の花では約8000~10000個、10月の花では約14000個ほど必要となるそうです。ジャスミンの花は暑くて太陽の光が降りそそぐ夏には花の香りが増し、雨や風の強い日になるとその香りは半分になるといいます。
GRASSE ジャスミン
ジャスミンはヒマラヤ山脈の南麓が原産地で、ここグラースには1500年中頃にイランから Jasminum officinal L. の品種が持ち込まれ、これが高所で野生化しました。これにスペイン産のJasminum grandifloraを接ぎ木したものが、香料用で栽培されています。この野生化したジャスミンは霜や根腐に強く、これにスペイン産のジャスミンを接ぎ木することで、丈夫で香りの良い品種ができるそうです。
ジャスミンの花1000kgから約3kgのコンクレート(黄色固形)が出来、これを更に精製すると約1.5kg のアブソリュート(茶色液体)が採れます。このジャスミンアブソリュート1kg を得るためにはおよそ650kgの花が必要で、花の数にすると600万個が必要となります。昨年のジャスミンオイルの価格は45,000ユーロと言っていましたので、日本円に換算しますと約500万円/kgとなり、これは花の香りの中でも高価なものになります。
自然の香りは、けっして足跡を残さない
今回の旅の目的地は南フランスのグラースでした。滞在中の約三週間は連日の猛暑に加え、一度も雨が降りませんでした。この地方は一年を通じて温暖な気候のため、オリーブやイチジク、オレンジ、糸杉など木が多くみられます。
市場では色とりどりの果物や野菜をはじめ、種類豊富なチーズやオリーブオイルなどが所せましと並んでいました。この時期は特に盛夏だったせいかトマトやパプリカの赤色が鮮やかで、フルーツのような甘みと香りがありました。朝食には市場で購入した真っ赤に熟したトマトとグレープフルーツを毎朝食べていました。
1830年頃のグラースには45社ほどの香料会社がありましたが、現在では10数社に減少しています。この理由として、16世紀以来グラースという土地は、品質の良い天然香料を抽出する技術とノウハウを持った会社が集まる場所でしたが、現代の香水に代表される香料は、天然香料から合成香料に大きく移り変わったため、コストの高い天然香料の需要が大きく減少したためといわれます。
昔の香水に比べて現代の香水は香りの質が落ちたとよくいわれます。これはコストを最優先にするため、天然香料を使用していたものを合成香料に変えたり、天然香料の割合を減らしたことが最大の原因です。 現在、流通している香水に含まれる天然香料の割合は数%でしかありません。
前述したようにグラース産のジャスミンアブソリュートは1kgで500万円ほどします。それに比べジャスミンの調合香料は1kgあたりおよそ1500円ほどです。どちらの香料を使用しても品質に変わりがなければコストが安い方が良いですが、やはり天然の香料を使用するのと合成の香料を使用するのとでは、出来上がる製品の品質は全く異なります。
今回GIPのサマースクールで天然香料と合成香料の両方を学び感じたことは、やはり人を癒したり調和したりするものは自然のものが良いということでした。グラースの街を一人歩いていると草花の香りがどこからか聴こえてきます。自然の香りは全体として存在が感じられ、けっして足あとを残しません。 今回グラースを旅してこんな香りが創りたいと思いました。
2011 秋 / 著者:篠原康幸